イチゴ栽培と作型
イチゴの生育特性
イチゴは葉・茎・根からなるバラ科野菜です。
葉は3枚の小葉と葉柄からなります。
茎部は極めて短い茎で「クラウン」と称し、葉が更新されるにつれて大きくなります。また、側枝が生長肥大して分げつします。
根は、茎部の新葉の付け根より発生する1次根と、その1次根から分岐する2・3次根の側根からなります。根の分布は比較的狭くて浅いです。
品種群
品種分類の基本は、花芽分化・休眠の違いによるものです。
花芽分化は夏の高温から気温が下がり、日長が短くなるにつれて花芽が形成されます。そして、花芽後の発育は長日高温で促進されます。
休眠は花芽分化と同様の短日・低温で開始しますが、花芽分化より短い日長と低い温度で誘導されます。そして、長日・低温で打破されます。
暖地型品種は休眠をほとんどしないか、5℃以下の低温要求時間が150時間以下の品種で、「女峰」「とよのか」など促成栽培向きです。
寒地型品種は休眠が深く、低温要求時間が1000時間以上の品種で、「盛岡16号」など抑制栽培向きです。
中間型品種は低温要求時間が200~750時間の品種で「宝交早生(500時間程度)」など生理作用の制御で大方の作型に向きます。
作型
促成栽培
低温、短日、窒素中断などの育苗管理によって花芽分化を促進し、保温や加温で花芽を発育させて、11~5月に収穫します。
休眠の浅い品種を選びます。深い品種は電照等によって休眠に入らないようにします。本県での栽培はありません。
半促成栽培
休眠が破れた後にトンネル掛けして収穫を早めます。強制的に休眠打破することもあります。
露地栽培
自然環境下の栽培ですが、マルチを利用して収量を安定させます。休眠の比較的深い品種を選びます。
抑制栽培
花芽を形成した株を11~1月ごろ掘り上げて、0~1℃の冷蔵庫で貯蔵して発育を抑制し、9~12月に収穫します。
各器官の生理的変化 | 日長と温度の関係 |
ランナーの発生 | 休眠打破後の長日・高温(6~9月) |
株の栄養成長(地上部) 株の栄養成長(地下部) |
長日(3~5月) 短日(9月以降) |
花芽の分化 | 短日、低温(9/中~) 花芽分化早進化技術[夜冷短日処理(10℃/8hr/20日) 低温暗黒処理(10℃/0hr/15日) 高冷地育苗 ポット育苗(窒素中断)] |
花芽の発育 | 長日、高温(3/下~) |
休眠の開始 休眠の打破 |
短日、低温(11/中) 休眠阻止[ジベレリン処理、電照] 長日、低温(2/中) 強制休眠打破[株冷蔵、ジベレリン処理] |
果実の肥大 果実の成熟 |
低温[気温が低いと大果で糖度が高くなる] 強日照、高温[陰地弱光下で生育可能/光飽和点2.5万ルクス] |
育苗方法
イチゴの苗は、苗専用の親株または収穫を終えた株から出るランナーを用います。親株1株から30~60本程度の子苗が得られます。
親株植付け
専用親株を仕立てるには、ウイルス病や萎黄病、炭そ病など親株から継代する病気に罹っていない無病株を選びます。選んだ株は早々に収穫を打ち切り移植します。その親株床は萎黄病等の土壌病原菌がいない圃場で、畦幅2mに60cm間隔で5月下旬頃に植え付けます。
採苗と仮植
ランナーの1番目の苗は不時出蕾などで収量が劣るので採苗しないで、2~4番目の本葉3~4枚の苗を採ります。花房の位置が分かるようにランナーは親株側を3cm程残して採苗します。
仮植床は親株床と同様無病地を選び、畦幅120cmで株間15cmの6~7条植えにします。8月下旬~9月上旬の移植から約1か月の育苗期間で根量は数倍に増えクラウンも充実した苗になります。
本圃の管理
定植に適した苗は、(1)本葉が4~5枚 (2)クラウン径1.2cmくらいの若苗 (3)生育不良、新葉の奇形や変色などを示す苗は除き、健全な苗を選びます。
定植方法は、(1)クラウンの下が少し隠れる程度の浅植え (2)花房が通路側に出るよう親からの古いランナーを畦の内側に向けます。
イチゴ主産地では、棚にプランターを上げて立ったまま作業ができる高設栽培が普及しています。