<WTOってよくみかけるけど>

 WTOという文字や言葉をよく見たり聞いたりしますが、それは世界貿易機関(ワールド・トレード・オーガニゼーション)の頭文字をとったものです。農業を始めとする各分野の貿易ルールを各国に守ってもらうための国際機関で1995年1月1日に設立されました。

 このWTOの場で、新しい貿易ルールを決めるため2000年から農業、金融、サービスなどの貿易問題が話し合われています。
 私たちは、WTO農業交渉の内容等に無関心では済まされません。なぜなら、WTO協議に基づく新しい農業貿易のルールや国内農業政策の変更は私たちの農業経営に大きな影響を与えるからです。

 例えば、WTOの前身であったガット・ウルグアイラウンドの農業交渉の結果、米過剰にもかかわらず、MA(ミニマム・アクセス)米を受け入れざるをえないという理不尽な交渉結果となったのです(1993年12月)。
 その結果、MA米は在庫圧力となり、米価低迷の一因となっています。
 こうしたことを繰り返さないためにも、WTO農業交渉について大きな関心を持つことが必要です。


<農産物は農産物である>

 農作物貿易を議論するにあたり、農産物を工業製品の貿易と同じルールで扱うべきであるとの意見があります。これは、豪州を中心としたケアンズ・グループなどが主張していることです。

 こうした主張は、農業協定に示されている食料安定保障等への配慮や農業の持つ特殊性を無視したものであり、さらに、農業が食料の供給以外に果たしている自然環境や国土の保全といった役割を否定するものです。

ケアンズ・グループ 輸出補助金の撤廃を目指して、ウルグアイ・ラウンド交渉期間中に結成された農産物輸出国の集まり。関税や貿易を歪める国内支持の撤廃も求めている。グループ名はオーストラリアのケアンズという都市で結成されたことに由来している。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、フィジー、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、南アフリカ、タイ、ウルグアイ、パラグアイの15ヵ国で構成されている。



<農業の多面的機能への配慮>

 農業は、食料生産だけでなく、いろいろな役割を果たしています。農地は水を貯え、下流の都市を洪水から守り、飲み水や工業用水を供給しています。また、植物は酸素をつくりだし、空気をきれいにし、緑豊かな景観は人々の心にやすらぎをもたらします。
  農業生産活動に伴う、農産物以外のいろいろな役割を総称して「多面的機能」と呼んでいます。農業の国土・環境などを守る役割は、年間合計約7兆円にもなるということです(農林水産省の試算)。

 この「多面的機能」は、それぞれの国において持続的に農業を営むことにより発揮されるものであり、貿易で確保することはできません。交渉過程のなかで国際合意を得ていくことが必要になっています。










 農林水産省農業総合研究所の試算を活用(「耕せニッポン」より)




<食料安全保障について>

食料は生命と健康の維持に欠かすことができない最も基礎的で重要な物資であり、どんな場合でも食料を安定的に確保することはどの国にとっても国民に対する国の基本的な義務です。
 地球では今、日本の人口の7倍にあたる8億人が飢えに苦しんでいます。人口の急増、水不足や耕地の減少で、今後、世界的な食料不足が心配されています。
 世界の食糧需給は、今後とも不安定な側面が強いことから、各国が輸入に過度に依存することは問題があり、食料供給は、国内生産を増大させることを基本とすべきです。




<国境措置の必要性と輸出国と輸入国の権利義務>

国境措置とは、輸出入の際に講じられる措置のことです。食料輸入国における食料安全保障の確立には農業の発展による一定の国内生産の確保、適切な国境措置が必要であることから、多面的機能を根拠とした輸入国側の権利を明確化していくことが必要です。
 現行の輸出国と輸入国の権利義務関係を見ると、権利・義務がアンバランスとなっています。輸出する側のルールを強化し、輸出国・輸入国の権利と義務のバランスを確保する必要があります。
 また、WTO加盟国の大半が途上国であり、途上国の事情を十分配慮し、途上国がWTO体制に積極的に参加できるような貿易ルールを構築することが重要です。

 

○輸入側と輸出側の規律に関する対比表

  輸入側 輸出側
関税削減率 輸入関税は農産物全体で平均36%(品目ごとに最低15%)削減を約束。 輸出税に係る削減義務なし。
輸出入の数量制限 輸入数量制限等は原則として認められていない。 輸出禁止・規制は一定の条件のもと存続。
アクセス機会の提供 輸入実績が国内消費量の5%以内の産品について最低限の輸入機会を設定。 義務なし
全中資料活用 学習用資料「WTO農業交渉における課題と論点について」より



<WTO農業交渉に向けて私たちは訴えます>

 

 私たちJA全青協は、日本における意欲のある青年農業者によって構成されています。私たちは、女性農業者と連携して農業の発展に取り組むとともに、「子どもたちの未来へ」というキャンペーンを展開し、21世紀を生きる子どもたちに豊かな大地と自然、健康な食と命を引き継ぐ運動を展開しています。さらに、消費者団体と定期的な意見交換の場を持ち、健康・安全な食の供給、環境にやさしい持続的農業の発展に努めています。
 しかし、わが国の食料自給率は輸入農産物の増大等によって40%を切るまでに低下しています。さらに、国際的な市場競争が激化する中で、21世紀には地球規模での環境の悪化や食料不足も懸念されており、国民の多くは不安を抱いています。こうしたことから、私たちは、国内生産の増大をはかることが農業政策の基本であると確信しています。
 私たちは WTO農業交渉がその国のおかれた実態を踏まえ、食料輸入国と輸出国、先進国と発展途上国のいずれにとっても公平で、真に公正な貿易ルールの確立と各国農業の共存を目的にして進められるべきであると考えています。
 この目的が達成されるためには、農業の多面的機能や国内生産を基本とした食料安全保障の重要性が、交渉の場で積極的に議論され各国の共通認識となるとともに、輸出国の農業も輸入国の農業も、ともに持続的に発展していくことが極めて重要です。
 こうした理由から、以下の点がWTO農業交渉の中で新たな貿易ルールとして確立されることを強く訴えます。

1. 農業の多面的機能の重要性が位置付けられること
2. 食料安全保障が確保されること
3. 輸出国と輸入国の権利と義務のバランスを確保すること
4. 食料安全保障を含む農家の多面的機能の発揮には一定の政策的な支援が必要なこと
5. 国境措置は輸入国の正当な権利であること
6. 開発途上国の農業の持続的発展を促進させること
7. 遺伝子組み換え体(GMO)などの課題に積極的に取り組むこと